たびなかば

on a journey

【中国・重慶】鉄人に肉まん作りを教わった話。

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ふかふかパンパンの肉まん
先日2週間重慶を旅行したとき、滞在先のホストファミリーに家庭料理を教わりたいと思い、肉まんをリクエスト。
皮から手作りでめっちゃくちゃ美味しかったので、その時のお話を載せます。
 

皮を作る

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当初は食べ物の中で一番好きな『餃子』を教わろうと思っていたのだが、ホストが「皮から作るうちの肉まんはすごく美味しい。」と言っていたのを聞き、肉まんを教わることに。

当日の先生はホストファミリーのパパが担当。このパパこそが、『鉄人』だった。

その父君、朝5時に家より出でて仕事を始め、夕方前に帰宅し夕食つくるなり。
食後、皆人の後片付けもすべてやるなり。休日さえ3食つくり、始終はたらき、休むる姿これなし。我これを見て、「鉄人」と名付けん。

古文、時間かかるのでやめます。

 

ある日「パパ、休まないの?」と聞いたら、

「休むのは寝る時で十分だよ」と言われた。ソファでお茶飲みながらバカな質問した私を殴ってください。

そんな鉄人パパの指導のもと初めての手作り肉まんに挑戦。なんか、緊張する…

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鉄人の相棒メカ1号

「粉+水+卵+ドライイースト+油」などを入れて、鉄人の相棒メカ1号「KONEKI」のスイッチオン。鉄人曰く、「昔は手でこねていて、時間もかかるし手首も痛くなるから大変だった」とのこと。鉄人が言うのだからその大変さは私の想像をはるかに超えているのだろう。

具材を作る

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相棒メカ2号「O-BUN」

30分ほど発酵させている間、肉まんの中身の下ごしらえ。好きな具材を選んで入れる。

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相棒メカ3号「Mincer」

日本のような薄切り肉ならフードプロセッサーくらいの刃でもいいけど、中国は基本ブロックで売っているので、それを小さめの塊に切ってこのメカへ押し込む。

かなりの騒音だが、広い中国では隣人たちの耳を心配する必要はなさそうだ。

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自家製中国漬物

次の具材は「酸菜suancai」。

壺の中に塩、唐辛子、お酒、好きな野菜を入れて発酵させる自家製酸菜。日本の漬物、韓国のキムチに相当する。ほとんどの家にあるそうで、家庭ごとに味も違うそう。

そして鉄人の家の酸菜はものすごく美味しい。彼のタフさの秘訣はこの発酵食品なのかもしれない。

包む!

お肉に酸菜、筍、ネギ、生姜などを入れて混ぜた具を、鉄人が伸ばした生地で包んでいく。包む係は2人いるのに、鉄人のスピードが速すぎて間に合わない。

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鉄人を見習って立ちの姿勢

そしてもうそろそろ1時間が経つ頃だが、鉄人(右)は一向に休まない。「どうぞ私がやりますので(お願いですから)座ってください」と言っても「大丈夫だ。君が休みなさい」と笑顔でイスを勧めてくる。

なぜ。なぜこんなにも休まないのか。

鉄人が1秒も休まず立ちっぱなしで皮を伸ばしてくれているのに私が座るわけにはいかない。こちらも必然的に立ったまま具を包み続ける。隣で悠々と座って包むママが羨ましいが、甘えるわけにはいかない。

そうして湧く疑問。
これは本当に肉まんの作り方を教わっている時間なのか?
もしかして丹田の鍛え方を教わっている時間なんじゃないだろうか。

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さすが鉄人。並べ方も美しい

そんな疑問が浮かぶ中、最後の1個を包み終わる。一息つきたいところだが、間髪入れずに蒸し器の前へと向かう鉄人。

「出来上がりを想定してできるだけ間隔を空けて置くんだよ。」

2次発酵させた後に15分ほど蒸したら巨大肉まんの出来上がりだが、この間も鉄人はテーブルのお片づけや床のクイックルワイパーに余念がない。

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鉄人の作る最強の肉まん

座る!

出来上がった。ついに出来上がった。ようやく訪れた休憩試食の時間。
「食べる時は座らないと、お行儀が悪いから…」誰に聞かれたわけでもないのに言い訳しながら椅子に座って肉まんをほうばる。

「あー…!!」

肉まんを食べて脚が喜ぶのは初めてだった。

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「鉄人餃子」

ふわっふわの皮に包まれたお肉の旨味と酸菜の酸味がたまらなく美味しい。たくさん作ったので冷まして冷凍。食べたい時にレンジでチンして食べられる。明日もこの美味しい肉まんを食べられる。これだけで生きる理由は十分だ。

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朝食

こうして手作り肉まん作りの会は大成功に終わった。

エピローグ

ホストへのお礼に、肉じゃがとなすの煮浸しを作ることにした。

今ならわかる。なぜそれを作ってしまったのか。濃味が好きな重慶人に、よりによって和風出汁を出すとは。肉まんの会で鉄人に与えられた試練は思ったより深く私の思考回路を破壊していたようだ。

結果として、想像以上に不人気だった。なんて正直な重慶人。空気を察知し追加メニューとして作った唐揚げは濃いめに味付けしたが、それでも自家製麻辣をたっぷりつけて食べていた。

静かに一人、また一人とテーブルを離れる家族たち。そんな中、鉄人だけは最後まで席につき、私に向かって「美味しいね、これ」と何度も微笑みかけてくれるのだった。

てつじん…

体がタフな鉄人は、心優しい人でした。