たびなかば

on a journey

世界が美しい本当の理由

 

北京にいる時、本当に楽しかった。

特に、胡同の中を歩く時。

 

何かをするわけでもない、目的があるわけでもない。

でも、ただただ楽しかった。

 

なぜだろう?

何かを食べたり、美味しいもんを見つけたり、買い物をしたり、それも楽しかった。

でもやっぱり一番心に残るのは、誰かと話したことだった。

 

地下鉄の駅まで連れて行ってくれた乗り合いのおばさん。 

 

握手をして別れた同い年のタクシー運転手。

 

見知らぬ人間を家に招き、いつでも連絡をと番号を残してくれたおばさん。

 

初めて会う日本人の冗談に付き合ってくれたバススタッフ。

 

開発した商品について懸命に語る高校生。

 

どこで道を間違えたんだろうと笑うホステルの女の子。

 

私の話を静かに聞き、美味しい焼餅をくれた老夫婦。

 

私は誰かと話したい。

話すことで、この世界はまだ優しく美しいんだということを確かめているようだ。

この世界はまだ捨てたもんじゃない。

世界は美しい。そう心から言えるように。

 

 

なんてことだ。

この世界が美しいかどうか。それを決めるのは、

透き通る青い海や凛と佇む岩、生命力に溢れた緑ではなく、人の愛情だったなんて。