たびなかば

on a journey

【デジタルメモリー】20XX年のあなたへ

 

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 10年で自分の周りの世界が変わる時代になった。変わらなくてはいけないのに変わらなかったり、変わってしまってはダメなのに変わったりもする。

10年後の世界では、私の知っている風景は、香りは、音は、味は、どけだけ変わっているのか?

私が見た、嗅いだ、聞いた、食べた味を、残しておきたい。
いつ記憶を失うかはわからないから、その前にデジタルメモリーで残しておきたい。

誰に見られることもなくゆらゆらと浮遊を続けて、できれば私よりも長生きをして、
何十年何百年後かに誰かが、いや、文字の意味はわかるけど人間ではない何かが、
これを見て、2011年と2019年に思いを馳せてくれたら、こんなに素敵なことはない。

 


気仙沼ウミネコは遠くから見ると可愛いく見えたが、間近で見ると恐ろしい顔をしていた。
空腹を訴え叫ぶ子どものように、鳥たちが銘々声を絞り鳴き続けている。青く感じられる空を背に、何百の命を預けられたはちきれんばかりの網から、秋刀魚が重力に抗うことなく液体のようにトラックの荷台に広がっていく。私の足は銀色の沼に深く沈んで、言葉の通り命の重さで身動きが取れなかった。人は笑い、嬉しそうで誇らしげだった。
全身についた海の生命の匂いは何百キロ離れても消えなかったが、またここの人達も嬉しそうに笑った。
「新しく作っていくんだ」という言葉に含まれた全ての意味を理解することはできないけれど、あなたがそう口にするなら私もそうしようと思う。

 


私の体の中にある記憶。一体どうすればあなたと共有できるだろう。私が消えてしまったら、その事実はどうやって過去に残っていくのだろう。

これを見た20XX年、2XXX年のあなたが伝えて欲しい。
どんな方法でもいい。過去に存在した風景の素晴らしい一部を、後世に残して欲しい。